― バイクメーカーで自動車技術? ―
私が勤め上げた会社は、ホンダやスズキとは違い、自動車を作らないバイクメーカーでした。その中にあって、25年以上を自動車技術の開発に携わってきました。
有名な自動車エンジン事業では、最終的に事業責任者を務めておりましたが、ほとんど無名の車体技術開発グループは、私がリーダーとしてユニークな技術開発を進めてきました。
当初開発した技術は、REAS (relative absorbaer system) という、制御や動力源が無いのにアクティブサスペンション以上の総合性能を発揮するダンパーシステムです。
これを武器に、世界中の主な自動車会社への売込みを開始し、時には各社のトップテストドライバーと乗り合わせしながら、結局自動車の操縦安定性はどうあるべきかの「モノサシ」がどんどん成長していったのです。
当時、自動車用サスペンション技術開発をスタートさせたいきさつは、
・ 高性能自動車エンジンだけでは、車体が追いつかず楽しめない。
・ モノクロスサスペンションを始めとするバイク用サスペンション基礎技術があった。
・ 社内のジムカーナクラブがあり、自動車の車体技術をやりたい人材が集まった。
これらの英知を集め、REASはサス事業としてスタートしました。
REASは、トヨタの4Runner、アウディの超高性能車RSシリーズに今でも採用されています。アメリカのあるユーザーさんからは、「あなたがREASの開発者か。 私の4Runnerは背が高いのにスポーツカーのように安定して走る。素晴らしい技術だ。」とサインを求められたことがありました。
このようなお客様の声を、当時の開発で苦労を共にした仲間たちに聞かせたやりたいと思います。