― そして ―

 

 会社人生最後の大仕事は、RV事業部というオフロード車(スノーモビル、ATV、ROV)を事業とする部門を丸ごと任されたことです。

 

 それはそれは日本にいてはわからない、想像を絶するファンライディングの世界に思い切り突っ込んでいくという、たまらなく面白い仕事でした。

 

 4輪の経験があったから、海外メーカーとの仕事の経験が豊富だったからが理由でしたが、私のノウハウの使いどころ満載であるばかりか、たとえばスノーモビルのサスペンションがタイヤではなくスキーであることから、これまで車両とはタイヤやパワーステアリングを介して隔靴掻痒の対話をしていたところに、直接的な路面(雪面)感覚を味わうことができ、あらたな発見が数多く生まれ、自動車工学としての究極の理論とこれまでの謎解きができたのです。

 

 そんなエンジニアとしての体験のみでなく、事業責任者として多くの社員の皆さんや海外拠点の皆さんとコミュニケーションをとれたことが最高の宝物でした。

 つくづく思うのは、事業運営とエンジニアリングは別物のように思われがちですが、両方分かった時に見える世界は、誰にも理解できないものでした。さまざまな大企業の黎明期に社長が額に汗して商品開発に取り組む、そんなスピリットを忘れ、数字だけを追いかけていると、大切なお客様からそっぽを向かれ、最後は数字に返ってくる。

 

 つまり、魂がないのです。

 

 あなたの周りに、そんな例がちらほらしていませんか?

とはいえコストは大切、エンジニアの独りよがりで、複雑なシステムをペタペタくっ付けて客引きをするビジネスモデルに未来はありません。